詭弁家の行方

対話、交渉、説得、洗脳、人間心理、etc. 本のinputと実践でのoutput.

説得の心理技術 - 欲しい結果が手に入る「影響力」の作り方 - デイブ・ラクハニ (ダイレクト出版)

◾️ 本の概要・感想

16歳までカルト教団で過ごした経験から、洗脳、操作、人間心理に興味を持ち、研究し独自の説得理論を構築したコンサルによる説得技術解説書。

 

目に刺さる「悪用厳禁」の文字から危険な技術を学べそうな印象を与えるが、オーソドックスな内容。説得(洗脳)に必要な準備、スキルとビジネスへの応用方法が解説されている。翻訳本だからか少々読みにくい。

 

P.15 "真っ裸になった私を一文なしの状態でアメリカのどこかの町に放り出してみてほしい。私はその日のうちに衣服、食料、宿泊場所、収入を得る手段、支えてくれる仲間、再起するために必要な現金を入手しているだろう..." 

これは本書の技術だけでは無理そうです。魔法ではなく "ペルソナ" 形成を前提にした正攻法なんで。だからこそ実現性は高そうです。

 

男の恋愛、ナンパ、合コン、コンサル業、士業、営業(特にB to C)に効果がありそう。ネットワークビジネスセミナーや勧誘を受けた経験がある人は、本書のスキルをイメージしやすいと思います。

 

◾️ 要点

● 操作と説得のプロセスは同じ。区別するのは唯一、アプローチする側の意思。

 

● 操作の4条件: ① 解決策の模索、② 時間的プレッシャー、③ 損する可能性、④ エキスパートとの出会い。

● ① 解決策の模索 : 解決策を探している人は、知識や経験を持つ他者の意見に耳を傾けやすい。警戒心が弱い状態。

● ② 時間的プレッシャー : 時間的プレッシャーを受けている人は、衝動的な決断をしがち。

● ③ 損する可能性 : 決断しないと損すると感じている人は衝動的な決断をしがち。

● ④ エキスパートとの出会い : 専門知識をもったエキスパートによる懸念の払拭、後押しが効果的。

 

● 説得力を持った人になる条件 : 説得力のある「ペルソナ」をつくり上げる。

● ペルソナとは、社会的・表面的人格。自分が伝えたいメッセージを伝えるに相応しい見た目、発言、言葉遣い、立ち振る舞いによって形成される。

● ペルソナを形成する3要素 : ① 容姿・外見、② 声とコミュニケーションスキル、③ ポジショニング。

● ③ ポジショニングとは相手から見た自身の立ち位置であり、力が有るポジションに立つこと。要素①、②はポジショニングするのに必要。

● ① 容姿・外見 → エキスパートに期待する服装、容姿を徹底する。

● ② 声とコミュニケーションスキル → 聞き手に考えさせる、理解させるために、話の途中で間を置くなどの手法を活用する。エキスパートであることを徹底する。

● 明瞭かつ簡潔に、分かりやすくメッセージを伝えることが説得力を持たせる。

 

●  説得したい相手から既に信頼されている人、団体からの紹介、支持が「信頼性の移行」。説得力を強化するのに有効。

● 事実や数値だけの直線的なメッセージでは、与える印象を変えられない。理屈を超えたストーリーを語ること。巧みなストーリーには人の心を動かす力がある。

● ストーリーを語る前に、相手から伝えられた内容(抱えている問題、欲望)を反復し、こちらが明確に理解したことを理解させる。

● ストーリーには自身の経験を盛り込む。声に抑揚をつけて感情に訴えること。

● 注意を引く表現を使う。ストーリーが真実であることを根拠付けする。相手の反応を見ながら進める。

 

● 会話の準備段階から会話を通して、首尾一貫して相手との共通点を探す。共通点を増やし、親近感を抱かせる。共通経験を土台に説得を進める。

● 自分のことを知ってもらうより、相手を深く知ることが親近感に繋がる。

● 相手の考えを変えさせるには、好奇心をかきたてること。普段考えることのない漠然とした質問で好奇心を刺激する(例:あなたにとって成功とは何ですか?)

● 質問に対する納得のいく明確な回答を持っておく。相手に明示することで、エキスパートであることを認識させる。

● 相手の変えさせるべき信念に対して質問を投げかける。(疑問を呈して敵対心を抱かせない。)好奇心を刺激する。

● 好奇心を刺激する手法として、断片的に情報を空白にしたストーリーを語る。相手が自分で補完できたかを確認する。

● 説得にあたり相手の信念を入念に把握すること。説得とは相手の信念を覆すことではない。信念の共通点を相互理解の上、必要な部分を変えさせる。

● 説得のプロセスは、小さなステップを一歩ずつ踏ませ誘導する。プロセスの締めくくりに、次のステップの具体的内容と期限を合意し相手に責任を持たせる。

● 結論を下すキッカケが上手く掴めてない相手には仮定法が有効。「仮に決断したとしたら、どんな結果、違いが生まれるか?」を質問し、決断した場合の未来を経験させる。これにより決断に対する心理的ハードルを下げる。

● 相手が決断したら「あなたは賢い決断をした」と伝える。

 

上記以外にも、実際の営業活動での応用方法、交渉術なども解説されています。

読むのに時間がかかりますが、読む価値があります。

 

以上